一度立ち止まって、

 

  「練習は嘘をつかない」という言葉は好きですか?
僕は高校陸上部のとき、選手として一日に5,6時間くらい練習していたけど、全く結果に結びつかなかった。逆に、今は一日に1時間、長くて3時間程度しか練習していないけど、日々新しい技術が身に付き成長している。
  以前までの練習は確かに、「体力がつく」とか「根性がつく」みたいな、そういう意味では成果はあったのかもしれないけど、大会の結果という面で評価すれば見事に裏切ってくれた。練習すればうまくなる、というのは幻想にすぎない。正しい練習をしなければ、効果はついてこない。
  知識であれば30分で身につく技術を、1年かけて練習していた、そういうことだってあり得る訳だ。あるいは、相手の認知の穴をつければ、自分より何千時間練習している相手よりも早いタイムでゴールできるかもしれない。それが現実。もう少し建設的な話をすると、より効率的な練習をするには、「努力量」よりも「考え方(効率)」の方が重要。具体的には、まず自分でよく考えてみること。

例えば、「スイムを速く泳ぎたい」という選手がいます。
そこで「どうすればいいと思う?」と聞くと、大抵の人は次のように答えます。
「筋トレをする」
「プルの練習をする」
「フォームを良くする」

正確さはともかく、少なくとも理論的には間違っていないだろう。そこで、ある選手にはとりあえずやってみればいい、ということで数か月やらせてみても大して上達しない。聞いてみたところ、筋力トレーニングは継続していたそうだから、それを踏まえた上でもう一度、「スイムを速くするには?」と聞き直した。まあ少なくともトレーニングではないことは明確だから「フォームがおかしい」と当然言う。
「ならどうやって?」と進めていくと、結局「わからない」と行き詰まる。

「いいフォームってなんだろう?」
僕は、ここで思考をやめてしまうのが問題だと思う。学校のテストと同じ。わからない問題はテストと同じでいったん飛ばして、答えを見ればいい。

トライアスロンに答えなんかなくて、誰も何が正しいのかわからないのに?」
  つまり、答えを外に期待してしまう人が大半ってこと。だから「教えてください」と聞いてくる。でも、自分だって正しいスイムのフォームなんてわからない。なんかこうやって考えたらうまくいきそう、というのを複数試した結果、「偶然うまくいった」だけ。
ここで、自分流のやり方を教えてもいいんだけど、それだと相手の助けにはならないので、「スイムを速くするためのポイント」を10個ほど紙に書いて挙げさせる。すると、意外に答えられる。呼吸は吐くことを意識する、ストリームラインが基本、力を抜くこと意識する、キックを打ちすぎない、ひじの高さを変えない、キックは脚と脚を近づける、ストロークは入りが一番遅くて最後が一番早い……
間違った認識もあるけど、ほとんどが正解。つまり、速く泳ぐ泳ぎ方を知っていたのだ。でも、正解かどうかわからないから「(正解を)教えてください」と言う。
だから、本当の問題は“知らない”ことではない。

考えず、思い出しもせず、正解を求めるその姿勢。
 さて、その選手は結構まともなことを言えた訳だけど、実際に泳いでみるとさっきのことをほとんど実行していない。どう見ても、腕だけで泳いでいたりするし、ずっと力が入っている。つまり、やり方を知っているのに、できない。やっていない。
 ここには2つの問題がある。1つは、やり方を知っているけど、試したことがなかったという場合。もう一つは、試したけどイメージが違っていたという場合。前者は問題外だけど、実はそこそこいる。知識を得て、納得して終わる人は意外に多い。それなら始めからアドバイスなんか求めないでくれと思うけど。後者は、知識がないからという側面もあるし、あとは試行錯誤していないから、このやり方は間違っていると断定してしまう側面もある。この選手は後者。例えば、ストロークのプルにおいて、三角筋を意識していた。しかし、よく考えるとプル動作では広背筋を意識すべきだ。だから、力の方向にロスが出る。そういう細かい認識の違いがあった。
  これは、ある1つの答え。でも、理論的に考えると、「なぜプルでは広背筋を意識するのか?」という風に突き詰めていけば、「より大きな筋肉でパワーを伝えるため」となるので、間違いに気づくと思う。だから、考えたつもりにならず自分の頭で突き詰めていけば、あるいはいろいろ試してみればわかることなのだ。実際、そのあとにイメージをいくらか直してみるとフォームもタイムも良くなる。ストロークの一部分を本人に考えさせてから、ほんの20分くらいで。何ヶ月も、筋トレを積んでもほとんど速くならなったのに。
   勘付いている人もいると思うけど、別に練習をしなくても効果を上げることはできる。ほんの少し方法を考えて、ほんの少しイメージを修正する。それだけで効果は俄然上がる。僕はこの考えるための20分は、ただスイム練をする1時間、2時間よりも効果があったと思う。あるいは、たまたま運動連鎖や重心移動、浮心距離という考え方を知っていたから、考えられたという側面もあるかもしれない。そう考えると、学ぶ、いろいろな知識を蓄えておくことも大事なのだ。そうすれば、思考の幅が広がり、より良い練習が、より高いレベルの内容でこなせるようになる。
 だから、練習をする人には「本当に練習することだけが大事なのだろうか?」という風に考えてみてほしい。練習すれば練習するだけ強くなれる、という考え方にとらわれてしまえば、「練習しなくてはいけない」という観念に取りつかれる。そして、大事なことは練習することではなく、強くなることだということを忘れてしまう。それが過去の自分でもあったと常々思う。だから、そんな練習幻想には取りつかれないようにしてほしい。 
 まず、一度立ち止まって、自分に何ができるか,何をするべきか見つめ直す。そして、自分の頭で考えてみて、自分なりに仮説を立てて、試してみる。
厳しい練習をして満足をしている人は、結局本質的には何も変わっていない。個人的にはそう思う。まあ、正直なところこのような現象が起きているのはこのサークルや自分だけかもしれないから、参考になるかはわからないけど、書くことには意味があるかなと思って書いた。

 

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 6/20 19:05

去年にミーティング用で作って結局没にしたやつの供養。書いてみたはいいものの、いざ印刷してミーティングで配って読んだとして、それからどうすればいいかわからず頓挫。ちゃんと清書したwordファイルを貼っておくので必要であれば勝手にどうぞ、ぜひ役立てて下さい。

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