完甘美の空腹

relish the beauty, kindness, perfect

歯車

「自分の意思を表面に出せず苦しい」と悩む人とこんな話をした。

 

私「例えば、友達から誘われても行きたくない時は、思い切って断るような勇気も必要だと思う。」
A「...、『行きたくないから行かない』って言えばいいんですね。」
私「いや...あの、そのままストレートに言うと角が立つよね?」
A「うーん...。じゃあ、どういう風に言えばいいんですか?」
私「そうだなあ、例えば、体調が悪いから今度誘ってねとか、今日は用事があるとか...ね?嘘も方便って言うじゃない。」
A「体調が悪いと言えば良いんですね。」
私「あ、あの、時と場合によるよね。ケースバイケースだよ。」
A「じゃあ何と言えばいいんですか?」
私「う...。(暫し絶句)」

私「相手を尊重したり相手の立場に立って考えて行動するのと、自分を押し殺して相手に合わせる行動とは違うでしょう?」
A「違うんですか。」
私「例えば、友達が初デートに着ていく服を買いに行くのにあなたが付き合ったとするね。その時、『友達が付き合えと言うから買い物に付き合った』と考える自分と、『初デートが上手く行けば友達は喜ぶだろうな』と考える自分とは違うよね?」
A「どこが違うんですか?」
私「えーっと...、つまり、『付き合えと言うから』が自分を押し殺して付き合ってるよね?」
A「...はい。」
私「で、『喜ぶだろうな』は友達の事を考えてるよね?」
A「...。」
私「ね?」
A「...はい。」
私「『仕方なく』は、自分の意思通りじゃないから不満でしかないよね。じゃ、『友達の事を考えたら』はどう思う?」
A「......。」
私「ん?」
A「.....。(長い沈黙)」
私「(沈黙に耐えられず)じ、じゃあ、逆にあなたが片思いの人と念願の初デートが決まりました。新しい服を買うのにひとりではイマイチ服選びの自信がなくて友人についてきてもらいたいと思いました。試着するあなたに対して、友達から前向きなアドバイスを貰うのと、何も言わずじっと待ってるのとどちらが嬉しい?」
A「...別に、どっちでも。」
私「あ、そう...。」

 

終始こんな調子で、会話の歯車がかみ合わずに終わった。何をどう話せばその人に理解もらえるのかなと考えながら話していたけど、今ひとつ伝わらなかった。

脳の使わない神経回路は細くなりやがては機能しなくなる。いつだかの「依存」でも似たような事を書いたけれど、深く考えない習慣がついてしまうと自発的に考えられなくなる。自分の本当の意思や感情、相手の意思や感情を「こうだったらどうなるだろう?」と想像したり、深く考える事をしない習慣が出来ていたとしたならば、自分の苦しさの本質がいつまでも解らないままかもしれない。

 

 

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