完甘美の空腹

raison d'être

依存

「人はひとりでは生きていけない」とよく言われる。社会で生きていくには親からの保護や家族の援助、他の人との係わり合いが必要不可欠だ。そして道なき道を進まなければならないという人生に対する不安は誰しも抱くことだろう。この場所から、誰かに、あるいは何かに「頼る」気持ちは誰もが持つ当たり前の心理。心理学ではそれを「依存」と呼ぶ。

依存傾向が強い人は周囲の人や物から物理的・精神的な「支援」を得る事に対して貪欲で、それらを自らの判断や行動の指針にしている。つまり、自分の意思や判断を他に任せているということだ。そうすれば、その判断が失敗だったとしても「自分の責任」とはならないから、自分が傷つく割合は低くなる。別の見方をすると、判断を他の人や物に任せているために、自分の失敗や不幸、さらには自分の欲求が通らない事さえも自分が原因ではなく他の人や物のせいだと考えることになる。例えば、「職場の対人関係が上手く行かないのは会社のせい」「家庭が上手く行かないのは旦那のせい」「仕事がみつからないのは不況のせい」「何もかも上手く行かないのは悪霊が憑いてるせい」とか、そんなところだ。

この考え方が習慣化すると、物事の本質を見極め冷静に分析するような「深く考える」事が残念ながら苦手になるだろう。他に依存傾向が強い人の特徴として、白黒はっきりしたもの(決定的な判断がされているもの)に飛びつきやすい、自発的な意思を持ちにくいため騙されたりマインドコントロールされやすい、などが挙げられる。
また、特定の物事に対しての依存が習慣化して、それがないと日常生活にも支障を来たすほど不快・不安になると依存症という病気になる。依存は誰しも持っている普遍的なものだし、それ自体が悪い訳ではない。けれど、強い依存は逆に自分を苦しめる可能性がある。

何かあると誰かのせい、何かのせいだと考えてしまう傾向の強い人は、一度立ち止まって心の中の「本当の意思や欲求」を探してみといいかもしれない。

 

「自己愛」と「依存」の精神分析―コフート心理学入門 (PHP新書)

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