完甘美の空腹

日記 自分用

数学が嫌いな人ほど数学に喰われているという皮肉

「数学なんかやって何の意味があるの?」

因数分解が何の役に立つの?」

よく聞く話です。

僕も数学というか算数が大の苦手で、2分の1+3分の1=5分の2なんて答えていたのをよく覚えています。

ていうのはどうでもよくて、今回は消去法の話です。

 

数学が苦手なKくん。

「今更何をやっても無駄」と言い訳し、

「自分には向いていなかった」と投げ出し、

「こんなことできるはずがない」と諦める。

こんな現実逃避で自分の将来を絞っていき、

ついにはフリーターになったとさ。

めでたしめでたし。

 

これ、めちゃくちゃ数学的だなと思うんですよね。

ここでいう数学的というのは、

Kくんが「自分の不可能性を自覚することで自らの可能性を狭めている」っていう点についてです。

これはいわゆる消去法です。

数学においては背理法と呼ばれていますね。

 

じゃあ消去法(背理法)ってどんなものかというと...、

「いくつかある選択肢の中に正解があると仮定して、与えられた条件に不適なものを取り除いていき、残ったものが必然的に正解となる─。」というものです。

 

ん?数学が苦手なKくんもさっき似たようなことをしていましたね。

Kくんは自分の中に自身の進路があると仮定した上で、

言い訳することで自らの不可能性を自覚して

(選択肢を絞り)、

投げ出すことで自らの可能性を狭めて

(不適なものを取り除き)、

諦めることで進路を確定する

(残ったものが必然的に正解となる)。

おお!見事な消去法です。

数学が苦手だから数学から逃げて将来を決めていたはずなのに実は数学に将来を決められていた...という皮肉を感じた一節でした。

 

まあ数学が苦手な人に限った話ではないんですけど、こういう思考に陥りそうになったときに「あ、今数学に喰われそうになってる」って気づくと若干立ち直れるようになれますよたぶん。

 

 

以下、蛇足です。

不可能性っていう単語でこの文章を思い出しました。

「可能性という言葉を無制限に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である。」

森見登美彦四畳半神話大系」より

(1).可能性という言葉を使うときに、正確さを期すために、純粋に未来に対する可能性と、現在(場合によっては過去)に対する可能性をわけます。つまり、未来に可能な事柄を想像する上で、語られる可能性という言葉と、過去に違う選択をした場合に起きたかもしれないことを夢想する場合に語られる可能性という言葉は別物です。ていうか、日本語でその二つを分けて呼ぶ言葉がないだけなんですよね。

 

その後、樋口師匠はこう続けます。

「我々の大半の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根源だ。今ここにある君意外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。(後略)。」

森見登美彦「四畳半神話体系」より

 

(2).ここでいう『あり得べき』という言葉は、「あり」「得(う)」「べし」であって、この場合の「べし」は「当然○○でなければならない」という意味です。

直訳すると「『現在』こういう事態が可能でなければならない」ということになります。つまり樋口師匠のいう「可能性」は現在、あるいは過去におき得た事柄を夢想する際に語られる「可能性」であり、そして、「そんなものはない。現状の自分を受け入れろ。」と主人公を諭しているんですね。いい言葉です。

気になったら四畳半神話大系読みましょう。

四畳半神話大系 (角川文庫)

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ところで(1)で未来についての可能性と現在についての可能性に分けたのには、個人的な、というか認知行動療法上の理由があって、「自分に不可能なことは無限にあるのだから可能なことを数えるべきだ」と思うようになったからでした。

「平面に書かれた一点の座標を述べよ」と言われたら、数字を二つ挙げればいいけど、「平面に書かれた一点以外の座標を述べよ」といわれたら、無限に終わらない。なので未来については、不可能性を数えることは無意味なのです。

 

こうは書いているけど「循環しない無限小数を言い終わる」ことなどできないので、実は座標を表すことは不可能だという見方もあります。これについては野矢茂樹の「無限論の教室」を読むことをお勧めします。

まあ、「一点以外の座標」を言い尽くすよりは早いでしょうからね。

 

無限論の教室 (講談社現代新書)

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余談だけど、この大学の古文漢文の入試問題みたいな文章がいまだに読めることに感動してます。

我ながらよく覚えてるもんだ。。。。

(2)で述べた辺りの思想の元祖というか一番カッコイイ言い方をしたのはニーチェ永劫回帰です!詳細はWikipediaを読もう。最も、僕は「どんな思想や概念にも元祖が存在する」という説にいくらか疑問を持っているけど.....。

 

3/22 22:39 電車で帰宅中